こんにちは、現役治験コーディネーターの夏樹です。
治験コーディネーターはマイナーな職業ですが、日々治験の診療のお手伝いをしたり、治験薬のチェックをしたり、治験に関するデータ入力などをしています。
この記事は治験に参加してみようと考えられている方に向けた記事です。
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⇒治験登録サイトおすすめ4選!【現役治験コーディネーターが解説】
治験に参加するとお金がもらえる…という話をよく聞きませんか?
バイトとして治験に参加するという話も耳にされたことがあるかもしれません。
この治験に参加したときにもらえるお金とは何か?
どんなときにいくらもらえるのか?
など、治験コーディネーターである私が解説していきますね。
目次
治験に参加したときにもらえるお金は「負担軽減費」
治験に参加したときに被験者の方に支払われるお金は「負担軽減費」と言います。
よく「謝礼金」などと表記されているのを見ますが、それは間違いで正しくは「負担軽減費」です。
治験の負担軽減費とは
負担軽減費とは、その名の通り「負担を軽減するための費用」です。
具体的には、平成10年に提言された「治験を円滑に推進するための検討会」において、以下のように定義されます。
負担軽減費とは・・・
治験参加に伴う物心両面の種々の負担を勘案した、社会的常識の範囲内における費用の支払いによる被験者の負担の軽減
ちょっとカタいですね(^^;
治験に参加することによって次のような負担が生じます。
その救済措置として支払われるものです。
- 来院回数が増えるため、交通費の負担が増える
- 時間を拘束されるため、その間仕事ができないなどの機会損失がある
- 治験参加中には生活上の決まり事を守ったり日誌をつけたりする負担がある
治験の負担軽減費、相場は?
この負担軽減費がだいたいいくらくらい支払われるかについて解説します。
負担軽減費は、治験に参加することによるさまざまな負担に対して「社会的常識の範囲内における費用の支払い」をするということを前項で書きました。
つまり「治験に参加したことによる負担に見合わないほど高額である」のはNGです。
じゃあいくらなの?って感じですが、ある程度相場は決まっています。
通院:1回 7,000円~10,000円
入院:1泊 or 1入退院につき1回 10,000円~20,000円
※入院試験については入院期間や試験の概要によって変わります
なお、負担軽減費は製薬会社から支払われるものですが、金額は医療機関側(責任医師)が決定します。
ですので、同じ製薬会社の同じ試験をしていても医療機関によって負担軽減費の額が違うこともよくあります。
治験バイトという呼び方は適切ではない
治験のバイトが~とよく言われたりしますが、治験はバイトではありません。
治験はボランティアです。
たしかに負担軽減費は支払われるのですが、それは報酬ではありません。
あくまでも治験に参加したことによるデメリットへの救済措置です。
そのため、治験コーディネーターは「お金がもらえるので治験に参加しませんか~?」というようにお金をメリットとして候補者の方に声掛けしてはいけません。
また、負担軽減費は治験参加の誘因とならないように常識の範囲内の値段に設定されなければなりません。
…とはいえ、治験の説明補助をする際には負担軽減費のこともさらっと説明しますので、それをメリットと考える方もいらっしゃるでしょう。
(正直、私だったらメリットだと思いますし。笑)
実際現場で働いていると「(負担軽減費欲しいから)いい治験あったら紹介してね~」と言われることもあります。
ボランティアとはいえ、無償だったら正直治験なんて負担が増えるものにわざわざ参加する人は少なくなってしまうでしょう。
そうすると日本の創薬分野は大打撃を受けます。
苦しんでいる患者さんを薬で救えなくなってしまいます。
かといって、多額のお金を支払って報酬と引き換えに治験に参加してもらうのは倫理に反します。
その間を取ったのが「負担軽減費」であり、「来院1回7,000円~10,000円」の金額設定なのでしょう。
でも、治験コーディネーターとして働いていて感じるのは「治験ってわりと大変なのに、純粋にボランティアという気持ちで参加してくださる患者さんも結構多い」ということ。
中には、最初に説明したのに負担軽減費をもらえることを知らずにびっくりされる方もいらっしゃいます。笑
治験の負担軽減費のお支払方法
負担軽減費は口座振込と手渡しの2種類の支払い方法があります。
今は振込が多いですが以前は手渡しもよくありました。
だいたい1ヵ月ごとにまとめて支払われることが多いです。
例えば、1ヵ月に4回来院したらその翌月に4万円支払われます。
被験者さんが何人もいて来院回数の多い試験をしている中で手渡しで負担軽減費をお支払いするときは、手元に何十万もあったりするのでとってもハラハラします…。
治験の負担軽減費エピソード
あまり他のサイトと同じような説明ばかりだとちょっとあれなので(笑)
私が今まで治験コーディネーターとして働いていてちょっと印象に残っている負担軽減費のエピソードについてお話します。
負担軽減費のことを知らなかったAさん
Aさんは70代の女性で、治験参加前から2週間に1回定期的に通院されていた方でした。
治験参加のご同意をいただいた後、もともとの通院予定に合わせて治験の予定を組んだので特に通院回数が増えたとは思っていなかったようです。
(検査が増えるのね~とは思っていたそうですが…。)
この時は手渡しで負担軽減費を支払うことになっていたので、診察終わりにAさんに声をかけて別室にご案内し、負担軽減費をお渡しする手続きをしようとしました。
数枚の1万円札を見たAさんは仰天!!
「えええ?!なんのお金?!(; ・`д・´)」と。笑
どうやら、負担軽減費のことをよく理解されていなかったようです。
(一応同意前にお話するのですが…)
再度説明してご理解いただいたのですが、Aさんはお渡ししたお札をそろ~りとポケットに忍ばせ、個室を出てからも左右をキョロキョロ見まわしながら抜き足差し足でお帰りになられました。
通院が2週ごとなので、患者さん同士お知り合いもいらっしゃったようで、お金を受け取ったことを知られたくなかったんでしょうね…。
別に悪いお金ではないのですが、隠したくなる気持ちはわかります。
でも、しまっておけばわからないのにね!
ちょっと可愛いと思っちゃいました。笑
負担軽減費を断ったBさん
Bさんは50代の男性で、会社を経営されていました。
その時は口座振り込みだったので、口座の情報を登録させてもらおうとしたら「お金はいらないんだけどなぁ」と。
私はびっくりして「交通費もかかりますし、お仕事の時間も削ってもらってるので…」とBさんが治験に参加してもらっていることで負担があるのでは?と確認しました。
ですが「僕は時間自由になるから大丈夫だよ。人の役に立てるだけで気分がいいんだよね。それに、仕事サボる口実になるんだよ。」と、豪快に笑っていらっしゃいました。
ここだけの話、Bさんは高級住宅街にお住まいで身なりもよくとてもお金持ち…のようでした。
お金をたくさん稼ぐと、次は無償でもいいから人の役に立つことをしたくなると聞いたことがあるのですが、Bさんがまさにそんな感じだったのかもしれません…。
(私には理解できない領域…)
負担軽減費の受け取りは自由なのですが、今まで負担軽減費を断った人を見たことがないと治験コーディネーター歴8年の先輩も驚いていました。
まとめ
治験でもらえるお金、負担軽減費についてのお話でした!
治験にちょっと悪いイメージを持つ人がいるのも、「お金をもらって人体実験に参加する」という風に、身売り的な解釈をされることが多いからかもしれません。
ですが、治験でもらえる負担軽減費は、報酬ではなく負担に対する補填です。
(個人的にお金をメリットと感じるかどうかは置いといて)
その点の理解がもっと広がるといいなぁと治験コーディネーターとしては思います。
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治験登録サイトおすすめ4選!【現役治験コーディネーターが解説】
この記事は「治験のボランティアしてみようかな?」とお考えの方向けの記事です。 私は「治験コーディネーター(CRC)」として、医療機関で治験のお手伝いをする仕事をしています。 候補の方に治験 ...
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